第7 供述証拠の信用性
1 おすすめの構成
各事実を認定する際は,「供述の信用性は後述」としておいて,供述の信用性の検討は,後回しにする。
つまり,起案の後半に,「第3 供述の信用性判断」等の大項目を立てて,重要な供述証拠について,供述の信用性を検討する。
理論的には,それぞれの認定の中で供述の信用性を判断することも正しいが,書きにくいし,読みにくい。また,混乱しがち。後でまとめてやったほうが,書くのも読むのも簡単だし,混乱しない。
2 供述の信用性のポイント
(1)信用性判断のメルクマール
藤井論文のメルクマールだけでよい。
すなわち,
code:メルクマール
ⅰ 供述者の利害関係
ⅱ 知覚や記憶の条件等
ⅲ 証拠の裏付け
ⅳ 供述内容(合理性,具体性,迫真性)
ⅴ 供述経過(変遷の有無,一貫性)
ⅵ 供述態度
このうち,最重要は,ⅲ証拠の裏付けである。また,ⅱ知覚や記憶の条件等もわりと重要であり,とりわけ識別供述・目撃供述では,かなり重要となる。
その他について論じるときは,具体的事実を指摘した上で,メルクマールにあてはめるようにするとよい。
(2)認定対象ごとに信用性を判断する
供述証拠は,いくつかの部分を含んでいる。
性格が異なる供述内容であれば,それぞれ独立に,供述の信用性を検討する。
たとえば,一審解説の菅野証言においては,①不審人物は被告人である,②ガチャンと音がした時刻,というふたつの部分が存在する。①と②は独立に検討する。
(3)ポイントとなるメルクマールを中心に検討する
すべての供述に付き,(1)のメルクマールすべてを平板に検討する必要はない。供述の内容からして,ポイントとなるメルクマールがあるので,それを中心に検討する。(時間がなければ,ポイントだけ丁寧に論じて,あとは流せばよい。)
何がポイントかわからなければ,ⅲ証拠の裏付けに重点を置く。
ア 識別供述,類似供述の場合
ⅱ知覚・記憶の条件等。かなり丁寧に論じてもよい。
イ 共犯者供述の場合
ⅰ利害関係。
虚偽供述の動機を具体的に論じる。
ウ その他の供述
ⅲ証拠の裏付けが最重要。
供述内容と照らして,ポイントとなる客観的事実を適度に拾うこと。